パチュリー

初めてアロマセラピーに携わった時のハーブショプには、50種類を超えるエッセンシャルオイルが並んでいました。初心者の私には到底扱いきれないほどの香りばかりで、お世辞にも“良い香り”とは言い難い香りもあり、良さも見出せない時期でした。

そうは言っても香りを知らない事にはお客様に説明すらできないという現実もあり…慣れる事からスタートです。

 

その頃、第一印象最悪、これは…ちょっと…と思った香りがあります。

シソ科の植物でパチュリーという香りです。

多くのエッセンシャルオイルは生の植物を水蒸気蒸留法という方法で抽出するのですが、パチュリーは葉を乾燥・発酵させた後に水蒸気蒸留法で抽出します。その行程を踏み、抽出されている事もありエッセンシャルオイルには珍しい熟成型のオイルで、上質のワインの様に時間を重ねるほど香りが丸みを帯びる不思議な魅力を持った香りです。

 

その昔、インド産のカシミヤショールには虫食いから守る為に、乾燥させたパチュリーの葉をカシミヤショールの間に挟んでいたそうです。その後、インド産カシミヤショールの偽物が世に広まった際には、パチュリーの香りがするカシミヤショールがほんものの証とされていたと。衣服に移った香りは洗濯をしても残っている事もあるくらい持続性に優れた香りです。

アロマセラピストの間でもこの香りの虜になる方が多く、グランディングの香りとも云われ気持ちを落ち着かせ地に足をつかせることで現実的な判断ができるようになるとも云われています。

いくつかの香りをブレンドする際にも、パチュリー1滴が他の香りをしっかりとまとめ、軽やかな香りも揮発しづらくしてくれるので香水を作る際にも重宝するなど、実は長所をたくさん持った香りなのです。

先日、8年くらい熟成させていたパチュリーを使い終わりました。最後の一滴を使う事を躊躇するくらいトゲも無い深みのある香りに変化してくれていて、第一印象最悪の香りも今では最後の一滴を複雑な心持ちで大切に使い切るまでになり、パチュリーとは本当に不思議な香りだと思いました。

また新しい1本を開封し楽しみながら何年かかけて使ってみようと思います。